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0.世界の象徴

2008.11.25 *Tue
嵐がやってきた。


僅か数時間、世界は鳴りやまない雷に、暴風に、雨に打たれ続けた。
しかし規模の大きさから通り雨で済ませられるレベルでもなく、何の前触れもない嵐だったので皆大層珍しがった。
それから暫く経過し、ある噂がぽつりぽつりと広まり始めた。
曰く、あの希少価値の高い珠魅が集落を作っているのだと。
珠魅を種族と見れば宝石と見る者もいる。
最初は全員一様に笑い飛ばしていたが、野次馬根性のある者、宝石として珠魅を欲している者、様々な人間が彼等を捜し求め始めた。俗に珠魅狩りと呼ばれる行為である。
だが実際にその集落を発見できた者はいない。また探索中に何故か襲われる者が続出したため、勢いは徐々に衰退していった。
彼等の都市は海の真ん中にあるのだから、たどり着けないのもよく分かる。またそこが結界に包まれ視覚的に全く瞳に映らないのも誰も知らない。彼等なりの自己防衛でもあり、未だに問題が解決できていない象徴でもあった。
中には勘の良い者が海に出て、沈没したこともあるが、誰も集落とは関連付けなかった。辿り着けて幸運なのか否かは判断できない。
ところで、襲われた何人かが話していたことがある。
珠魅狩りやそのマーケットは裏の世界に通じている。世界の各地にその市場は存在するが、そこで零れた話題である。
それは信じられないものだったが、探しもの、もとい人である珠魅に襲われたのだと。信じる信じないは各々の判断に委ねるが、今までの彼等は弱く、狩ること自体容易いものだった。むしろ発見できる確率がとても低い方が問題だったのだ。無論行為の際珠魅の中には反発する者もいたが、結果は全て多勢に無勢だった。
だからこそ皆驚愕したのだ。
あるものは目つきの悪い剣士に、あるものは凛々しく巨大なハンマーを操るものに返り討ちに遭った。
中でもその内の数割かは珠魅ではなく、人間にやられたらしい。同業者かと思えばそうでもなく、彼等は珠魅と共存していたとのこと。あの疑心暗鬼の固まりとも呼べる珠魅が信頼している人間がいるという事実は驚異的なものがあった。
けれど、それが何処の誰なのかは誰も分かっていない。
そしてその人物こそ、珠魅の英雄だと言うことも知られていない。


珠魅復活の騒動が沈静化した頃、断崖の町と呼ばれる癒しの寺院ガトで騒動が起きた。
事実上最高指導者である司祭の誘拐未遂事件が発生した。犯人は悪魔や妖精である。
実は妖精も悪いものではないのだが、過去の記憶から妖精に畏怖の念を抱いている人々は妖精達の突然の暴挙にまた戦争が起こるのではないのかと戦慄した。
寺院内部の紛争も絶えないと聞く。なにより徐々に魔物が勢いづいてきたことに皆勘付いていた。
混乱の最中、空から巨大な蛇が降ってきた。日差しは遮られ、昼夜を問わず不気味な声が重く一帯に響いた。それは巨大な身体を持つ、物語に出てくる伝説の長竜ルシェイメアそのものだった。
また戦争の仕掛け人として黒竜王と呼ばれる悪魔が背後に付いていると、風の噂で流れた。
騒然とした。まさに世界の終わりかと考えても不思議ではない現実があった。己の全てを捨てて逃げだそうと考えるものもいた。街は魔物に襲われ、戸惑いで溢れかえった。
しかし長竜が出現して数日、異変が起きた。
彼の戦争を仕掛けた悪魔、黒竜王が倒されたらしい。
噂は事実となりその証拠として最大の異変の元である長竜が崩れだした。巨体を揺らし徐々に高度を下げ、やがて畏怖の象徴は朝焼けの中、東の海に沈んだ。
崩れた長竜から落ちた鱗は今もなお大地に深く突き刺さっている。
勢力を増した魔物も徐々に沈静化していった。
歓喜渦巻く中で、黒竜王の死と共に司祭が静かに息を引き取った噂が広まるのは暫く時間を要した。
問題の黒竜王であるが、歓声の中誰が倒したのかと皆が騒ぎ出した。
誘拐事件より寺院問題も関係している為、聖騎士なのではという話が出たが、当の聖騎士は数日前から戦闘で負傷し床に伏していたらしい。同じく司祭の幼なじみという、寺院の僧兵の一人も何故か同時期に倒れていた。
両者共に意識はとっくに回復しているらしいのだが、身体的ダメージが酷くとても戦場に立てる状態ではなかったという。
では誰が彼を倒したのか。英雄は誰だ。様々な憶測が飛び交ったが、答えは出なかったという。
まさか回復途中の聖騎士と僧兵をはり倒した元凶であるとは、想像した者はいないだろう。


それから更に1年ほど経過しただろうか。ガトの復興も最盛期となり徐々に活気を取り戻していく中、マナのバランスが崩れ、大気が密やかに澱んでいることに、人々は気付いていなかった。
一日中雨が止まない地域、逆に晴れ間が続き水が干上がる地域が現れだした。ようやく皆、認識した。
風の噂により、数ヶ月前北の骨の城の主紫紺の竜が何者かに殺されたと世間に知られることとなる。
骨なので殺されるという表現もいささか違和感を抱くが、彼の竜が守護するマナストーンが奪われたのがそもそもの原因らしい。もっとも彼の地にマナストーンがあることは奪われる前も今も誰にも知られていない事実だが。
とにかく竜が倒れたことにより、何かが起きバランスが崩れだしたのだと、人々は考えた。
次に東の群青の竜が倒れた。また、彼の守護者でもある風読み士が何人も負傷したらしい。
日に日に異変は巨大化し気候の変化により体調を崩し、あるいは飢饉に陥る者が増加した。実はこの間に白妙の竜がマナストーンを手放しており、一層異常の範囲が肥大しているのだが、殆どの人間は感知していなかった。
焔城と呼ばれる謎の城が一夜にして南の地に出現したのもその頃である。まさかこの現象の陰で世界支配を企む真紅の竜が動いていたとは誰が信じよう。
だがしかし、不思議なことにこの城は数日で姿を消し、また異変も突如治まった。
皆不思議がったが、度重なる異変に困憊し、深く考えることはなかった。
だからまたしても英雄が現れ、彼の計画をぶち壊したとは誰も推測しなかった。




約2年もの短い月日に連続的に発生した怪奇事件。
その都度現れる英雄。マナという巨大な力の存在。
これらは全て小さく、本当に小さく人々の中に降り積もっていった。
彼等が巨大な木を思い出すまではまだまだ時間が必要だ。

人柱を作り、他者を思いやる心を忘れてしまった種族。
自身を顧みて、他人に触れて、慈愛の心を取り戻す物語。

種族の違い思想の違いのいざこざ、親の思いは子に継がれやがて盲目的になる。
それぞれ違う想いがある、愛していただけ。それはただの一人も間違いなどない物語。

想いは時に暴力となる。想いの強さ故に自分を曲げることが出来ない者もいる。
目的地は一つ方法は二つ。たとえ世界を敵に回しても、果たしたかった約束の物語。


そして4つめの物語が動き出したことも、賢人を除き誰も気付いていなかった。
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最近の迷言:いつだって難産



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絶賛応援中


素敵企画を発見したので思わず。



本編目次

全14話予定

セイレーン編
第0話 世界の象徴
第1話 長くも短くもない一日( )
第2話 人魚の願い( )
第3話 鳥乙女の願い( )
第4話 寄り道道中( )
第5話 閑話休題( )
第6話 煌めきの都市防衛戦( )
第7話 旧時代
第8話 人形の願い
第9話 少しだけ長い一日

聖域編
第10話 鏡面世界
第11話 とても短い一日
第12話    の物語
第13話 聖域へと至る軌跡
第14話 ふたりぼっち
エピローグ

以降小出しにて更新中(現在第7話迄)



番外編目次

【時間軸】
ゲーム本編中:

サイト本編中:
現実と理想の差異による只の散歩
サイト本編後:
瑠璃くんの無駄に長い一日



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