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番外編2 現実と理想の差異による只の散歩

2009.03.09 *Mon
※番外編は本編と異なり基本的にCP制限はありません。

看板と異なりますが、あからさまに本編から引き続きエメロード→男主です。
基本的にわたしが雑食なのが原因ですが、主人公関連では主エメとか主エレは元々大好物だったりします。万歳。

苦手な方はご注意下さい。因みに第6話の補足となりますので、そちらが前提にあります。
長さとしてはSSS程度です。

 夜風が火照った頬を撫で、冷静さを取り戻してくれる。エメロードは縁に腰掛け、晒した素足をぶらぶらと振り子のようにぶら下げていた。未だに色濃く血の臭い、腐臭が周囲に漂っている。
 数十分前、エメロードは部屋から抜け出した。本音としては、姉たちと同じ場にいられなかった。何処か後ろめたいような、そんな感情にずっと支配されているからだ。後悔はしていないが、怖いことに変わりはなかった。
 思い出すのは数時間前の出来事。自身の発言は確実に一族を動揺させたはずだ。皆戸惑いを隠せない表情だった。パールがいたからこそ静まったが、一人だったらどうなっていたか分からない。質問攻めにあっただろうか。信じていても、恐ろしかった。
 エメロードは両手で肩を抱く。震えが止まらない。

「そんな体制だと、後ろから指一本で海面真っ逆さまだぞ、お前」
 驚いて振り向く。気配を殺していたのか、真後ろにセティールがいた。服装は先程と同様でぼろぼろのままだ。とても珠魅の英雄には見えない。
「セティールさんこそどうしたのよ。こんな夜更けに」
「雰囲気は十分だろ」
「うわぁ似付かわしくない台詞宣ったわよ」
「うるせ、んなことはどうでも良いんだよ」
「そうね。でも冗談もほどほどにしておいた方が良いと思うわ。本気にされたら困るでしょう」
「本気にする奴なんていないだろ、多分」

 彼はエメロードの隣に腰掛けた。星明かりに照らされた黄金色の髪が揺れている。とても柔らかそうだなと、そう思った。
 どうして彼がここにいるのか、何となく察していた。
「海が綺麗よね。でもね変なのよ、この海あの境界まで生き物がいないのよ」
 エメロードは陽炎のような境を指しながら笑った。知ってると、小さく返答があった。
 黒い海は穏やかだ。当然である。生き物がいなければ騒々しさも、争いも何もない。
「セティールさん、あたし少し怖いわ。あんなこと言ったけど、本当に正しかったのかしら」
「後悔してるのか」
「全然それはないわ。でもね、けど、怖いの」
 エメロードは堪えきれずセティールの服を掴んでいた。掌の温かさが忘れられない。勇気を貰ったのに、未だに挫けそうになる自分自身に対し悔しくなる。

「みんな、笑っていないかしら」
「絵空事でもないからな。全員真剣だったぞ」
「怒られないかしら」
「だったら途中でパールが止める」
「嫌われない……?」
「そうだとしたら、珠魅は涙なんて取り戻せていないだろ」

 涙は流れない。しかしエメロードは不可思議な感情が溢れて、どうすれば良いのか分からなくて、相手に縋りたくなった。
 彼は溜息をついて頭を撫でてきた。心地良くて、少し落ち着いてくる。どうしてこんな無駄とも言える行為が嬉しいのか、考えた。まるで珠魅ではなく、人間だ。
 エメロードは甘えたくなる感情を押し殺し、大丈夫だと笑った。
「そういえばセティールさんはどうしてここにいるのかしら」
「眠れなくて散歩してたらお前の姉に頼まれたんだよ。とっくにバレバレなんだよ、お前の考えなんて」
「なんだ。でもそっちの方がらしいかも。そうよね、うん」
 笑って誤魔化すのは得意分野だった。エメロードはあははと無駄に笑顔を振りまいた。知っていた。彼が家族以外に対し、自主的に行動を起こす人物ではないことくらい。熟知していたはずだったが、面と向かって告白されると流石に動揺を隠せなかった。
 でもそれでもこうして来てくれたところに優しさを感じる。ありがとうと感謝の気持ちで胸がいっぱいだ。

 帰ろうかと立ち上がったところで、ふとセティールは何かに気付き、背を向けた。エメロードは怪訝な顔をしてしまった。
「ガラス片とか、金属片とか落ちてるところを素足で歩くな。運ぶから、背中乗れって」
 ああ、だから憧れたんだと、今更再確認したことがある。エメロードは満面の笑みで飛びついた。バランスを崩しかけた彼に怒られたのは仕方ない。
 本当はもっと一緒にいたかった。ただの憧れ。だから多少は寄り道しても良いと考えた。
 とりあえず家が分からない彼に対し、適当に路を教えてみよう。怒られても笑って誤魔化せば問題ないだろう。
 僅かな羨望を隠したまま、満天の星空の中、悠々と気ままな散歩道はもう少しだけ続いた。
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素敵企画を発見したので思わず。



本編目次

全14話予定

セイレーン編
第0話 世界の象徴
第1話 長くも短くもない一日( )
第2話 人魚の願い( )
第3話 鳥乙女の願い( )
第4話 寄り道道中( )
第5話 閑話休題( )
第6話 煌めきの都市防衛戦( )
第7話 旧時代
第8話 人形の願い
第9話 少しだけ長い一日

聖域編
第10話 鏡面世界
第11話 とても短い一日
第12話    の物語
第13話 聖域へと至る軌跡
第14話 ふたりぼっち
エピローグ

以降小出しにて更新中(現在第7話迄)



番外編目次

【時間軸】
ゲーム本編中:

サイト本編中:
現実と理想の差異による只の散歩
サイト本編後:
瑠璃くんの無駄に長い一日



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